ミナ ペルホネンと皆川 明 30周年版レビュー|Casa BRUTUS &Premiumが紐解く「つぐ」創造の現在地

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  1. ミナ ペルホネンの現在地を、じっくり読み解いてみませんか
    1. 1.本書の概要と30周年特別編集としての位置づけ
    2. 2.皆川明とは何者か
    3. 3.「Tsugu(つぐ)」という言葉に込められた思想
    4. 4.Wearing What I Inherit|「つぐ」を纏うということ
    5. 5.The Essence of “Tsugu”|多様な表現者が語る「つぐ」
    6. 6.〈ミナ ペルホネン〉ものづくりの現場に宿る思想
    7. 7.皆川 明の暮らしをかたちづくる日用品と美意識
    8. 8.「つくる」を支える言葉の力
    9. 9.皆川 明の心を穏やかにする盛岡の旅
    10. 10.旅と創作がつながる「現在地」
    11. 11.皆川 明とミナ ペルホネンが見つめる北欧デザイン
    12. 12.フィンランド|建築と自然が共存するデザインの原点
    13. 13.デンマーク|自然と人の距離が近い美意識
    14. 14.スウェーデン|小さな宿と美術館に宿る静かな豊かさ
    15. 15.総合評価|30年を「つぐ」思想を一冊に収めた決定版
    16. 16.まとめ|ミナ ペルホネンは「これから」を語るブランド
    17. 11.皆川明(ミナ ペルホネン)と北欧デザイン
    18. 12.アルヴァ・アアルトに見る建築と思想の継承
    19. 13.フィンランド・デザインのルーツを巡る旅
    20. 14.デンマーク&スウェーデン、美意識を育む土地
    21. 15.総合評価|30周年にふさわしい決定版ムック
    22. 16.まとめ|「つぐ」という思想を手元に残すために

ミナ ペルホネンの現在地を、じっくり読み解いてみませんか

Casa BRUTUS &Premium特別編集

『Casa BRUTUS &Premium特別編集 ミナ ペルホネンと皆川 明 30周年版』は、minä perhonenの30年を「つぐ」という言葉で編み直す、極めて思想性の高いムックです。服やテキスタイルの美しさにとどまらず、人と人、物と時間、世代と記憶をどう繋いできたのかを多角的に掘り下げています。

皆川 明の暮らしや言葉、盛岡や北欧への旅、そしてものづくりの現場取材を通して浮かび上がるのは、流行とは距離を保ちながら“続いていく美しさ”を形にする姿勢です。Casa BRUTUSと&Premiumという2誌の視点が交差することで、読み物としても資料としても完成度の高い一冊に仕上がっています。ミナ ペルホネンを「着る人」だけでなく、「思想として理解したい人」にこそ手に取ってほしい内容です。

1.本書の概要と30周年特別編集としての位置づけ

本書『Casa BRUTUS &Premium特別編集 ミナ ペルホネンと皆川 明 30周年版』は、ファッションブランド〈ミナ ペルホネン〉の設立30周年という節目に刊行された、極めて資料性の高いムックです。

単なるブランドヒストリーではなく、「つぐ」という思想を軸に、服・暮らし・旅・建築・デザインへと広がる創造の現在地を立体的に捉えています。『Casa BRUTUS』と『&Premium』という二誌の視点が交差する点も、本書ならではの特徴です。


2.皆川明とは何者か

〈ミナ ペルホネン〉の創設者でありデザイナーの皆川 明は、「せめて100年続くブランド」を掲げ、流行や大量消費とは距離を置いたものづくりを続けてきました。

彼の創作は服づくりに留まらず、言葉、旅、建築、器、アートへと自然に広がっています。本書では、デザイナーという肩書き以上に、「暮らしの編集者」としての皆川明の姿が丁寧に描かれており、その思想の根幹を知ることができます。


3.「Tsugu(つぐ)」という言葉に込められた思想

本書の中心テーマである「Tsugu(つぐ)」は、単なる継承や伝統という意味を超えた概念です。人から人へ、時代から次の世代へ、思想や感性を手渡していく行為そのものを指しています。

ミナ ペルホネンの服は、着る人の時間を受け取り、やがて次の誰かへと渡されていく存在です。本章では、30年間積み重ねてきた関係性や物語が、「つぐ」という言葉にどのように結実しているのかが、写真とテキストで静かに語られます。


4.Wearing What I Inherit|「つぐ」を纏うということ

祷キララ、小林エリカ、柴田聡子という3人の表現者が〈ミナ ペルホネン〉を纏い、「つぐ」ことについて語る本パートは、本書の感情的な核といえる章です。

服は単なるファッションではなく、記憶や思想を内包した媒体である——彼女たちの言葉を通して、ミナ ペルホネンの服が「誰かの人生の一部になる」瞬間が浮かび上がります。読む者自身の記憶とも自然に重なり合う、静かな共感を呼ぶ構成です。


5.The Essence of “Tsugu”|多様な表現者が語る「つぐ」

河井菜摘、麻生要一郎、在本彌生、飯村弦太、塩川いづみ、松岡龍守、杉山早陽子、堀道弘など、ジャンルの異なる表現者たちが「あなたにとって〈つぐ〉とは?」という問いに答える章です。

それぞれの言葉は短くも示唆に富み、「つぐ」という概念が一つの正解を持たないことを教えてくれます。ミナ ペルホネンの思想が、個々人の解釈を許容しながら広がっていることを実感できる、知的刺激に満ちたパートです。

6.〈ミナ ペルホネン〉ものづくりの現場に宿る思想

minä perhonen〉のものづくりは、効率や大量生産とは異なる時間軸で進められています。本章では、神奈川レースやマルナカといった工場、さらには作家との協働現場を通して、素材と人に真摯に向き合う姿勢が描かれます。

単に美しいテキスタイルを生むだけでなく、技術や関係性そのものを「次の世代へつぐ」ことが、ミナ ペルホネンの創造の核であることが浮かび上がります。


7.皆川 明の暮らしをかたちづくる日用品と美意識

デザイナーである皆川 明の暮らしには、特別な贅沢よりも、長く使い続けたい道具が静かに並びます。キッチン用品、アート、日用品──それらはすべて「生活を整えるための美」として選ばれています。

本章では、創作と日常が切り離されていないこと、そして暮らしの延長線上にデザインがあるという、皆川 明の思想が丁寧に紹介されます。


8.「つくる」を支える言葉の力

皆川 明の創作を支えてきたのは、物だけでなく言葉の存在でもあります。谷川俊太郎、岩﨑政利、サン=テグジュペリ、大竹伸朗といった表現者たちの言葉は、思考の指針であり、立ち止まったときの羅針盤でもあります。

本章は、デザインが感性だけでなく、言語化された思想によって深められてきたことを示し、「つくること」を続けるための精神的支柱を読者に共有します。


9.皆川 明の心を穏やかにする盛岡の旅

本章では、皆川 明が「心を整える場所」として挙げる盛岡の旅が紹介されます。中津川の流れ、岩手県立美術館、光原社 本店、羅針盤、koota joki──いずれも、過剰な演出のない静かな魅力を持つ場所です。

盛岡という土地が持つ時間の流れは、皆川 明の創作姿勢と深く共鳴しており、「立ち止まるための旅」という新しい価値観を提示しています。


10.旅と創作がつながる「現在地」

ものづくり、暮らし、言葉、旅──本書後半で描かれる要素は、すべて皆川 明と〈ミナ ペルホネン〉の現在地を示しています。それは完成形ではなく、今も更新され続けるプロセスそのものです。

盛岡の旅が象徴するように、外へ向かう旅と内省の時間が循環することで、創造は深まっていく。本章は、「つぐ」というテーマが未来へ開かれていることを静かに示して締めくくられます。

11.皆川 明とミナ ペルホネンが見つめる北欧デザイン

皆川 明minä perhonenの創作の根底には、北欧デザインから受け継いだ思想があります。それは単なる造形美ではなく、自然と共にある暮らし、人の時間に寄り添うデザインという考え方です。

本章では、北欧の建築や工芸に通底する「長く使われるための美しさ」が、ミナ ペルホネンのテキスタイルやプロダクトにどのように翻訳されているのかが丁寧にひも解かれます。流行ではなく“時間”を味方につける姿勢が、30年続くブランドの核心であることが伝わってきます。


12.フィンランド|建築と自然が共存するデザインの原点

フィンランドは、皆川 明にとって特別な意味を持つ土地です。アルヴァ・アアルトの建築をはじめ、自然光や森との関係性を重視したデザイン思想は、ミナ ペルホネンの世界観と深く共鳴します。

本章では、建築・デザイン・食が一体となったフィンランドの都市風景が紹介され、デザインが生活の延長線上にあることを実感させてくれます。ものづくりを「特別な行為」にしない北欧的価値観が、静かに読者の感覚に染み込んでくる構成です。


13.デンマーク|自然と人の距離が近い美意識

デンマーク編では、皆川 明とともに巡る自然とデザインの関係性が描かれます。家具や建築はもちろん、風景そのものが人の感性を育てる存在として語られています。

派手さはなくとも、日々の暮らしを確実に豊かにするデザイン。その思想は、ミナ ペルホネンが掲げる「つぐ」というテーマと強く重なります。デザインとは人を主役にするための背景である、という北欧的価値観が印象的に伝えられる章です。


14.スウェーデン|小さな宿と美術館に宿る静かな豊かさ

スウェーデンでは、都市の華やかさよりも、小さな宿や美術館に宿る静かな豊かさに焦点が当てられます。皆川 明が惹かれるのは、装飾ではなく「空気感」そのものです。

本章を通して感じられるのは、デザインが主張しすぎないことの強さ。人が自然体で過ごせる空間こそが、長く記憶に残るという考え方は、ミナ ペルホネンの服づくりとも深くリンクしています。


15.総合評価|30年を「つぐ」思想を一冊に収めた決定版

Casa BRUTUS &Premium特別編集 ミナ ペルホネンと皆川 明 30周年版』は、ブランド30周年を祝う記念誌でありながら、過去を振り返るだけの一冊ではありません。

ものづくり、暮らし、旅、言葉、そして北欧デザイン。それらを貫く「つぐ」という思想が、多角的な視点で立体的に描かれています。ビジュアルブックとしての美しさと、読み物としての深さを兼ね備えた、長く手元に置きたくなる内容です。


16.まとめ|ミナ ペルホネンは「これから」を語るブランド

本書を読み終えて強く感じるのは、ミナ ペルホネンが30年の歴史を持ちながら、なお未来を見続けているブランドだということです。

「服をつくるのも、着るのも、ひとりの私。」という言葉どおり、個人の時間と人生に寄り添う姿勢は、これからの時代にこそ必要な価値観といえるでしょう。本書は、ミナ ペルホネンと皆川 明の“現在地”を記録すると同時に、次の30年へと思想を手渡す一冊です。

11.皆川明(ミナ ペルホネン)と北欧デザイン

皆川 明の創作を語るうえで、北欧デザインの存在は欠かせません。本章では、ミナ ペルホネンの思想と北欧デザインがどのように共鳴してきたのかが丁寧に紐解かれます。

自然への敬意、長く使われることを前提とした設計、装飾と実用の両立――それらは北欧デザインの核心であり、ミナのものづくりとも深く重なります。本特集は「影響関係」ではなく、「対話」として北欧を捉えている点が印象的です。


12.アルヴァ・アアルトに見る建築と思想の継承

北欧建築の象徴的存在であるアルヴァ・アアルトの建築を巡るパートでは、空間と人の関係性に焦点が当てられます。

機能性だけでなく、使う人の感情や時間の流れまでを包み込む建築思想は、ミナ ペルホネンのテキスタイルや服づくりとも強く共鳴します。本章は、建築とファッションという異分野を横断しながら、「つぐ」思想の根源を示す重要な章です。


13.フィンランド・デザインのルーツを巡る旅

フィンランド編では、ルート・ブリュックカイ・フランクオイバ・トイッカなど、北欧デザインを形づくった人物たちが紹介されます。

単なる人物紹介にとどまらず、「なぜフィンランドからこれほど多くの名作が生まれたのか」という背景まで踏み込んでいる点が、本書の読み応えを高めています。自然環境と創造性の関係が、静かに浮かび上がる章です。


14.デンマーク&スウェーデン、美意識を育む土地

デンマーク編では、ハンス J. ウェグナーポール・ケアホルムを軸に、素材と構造の美が語られます。一方スウェーデン編では、宿や美術館といった“滞在の場”を通して、生活に根ざしたデザインが紹介されます。

これらの都市ガイドは観光情報ではなく、「なぜこの土地から、この美意識が育ったのか」を体感的に伝える構成となっており、読み物としても旅のガイドとしても完成度が高い内容です。


15.総合評価|30周年にふさわしい決定版ムック

『Casa BRUTUS &Premium 特別編集 ミナ ペルホネンと皆川 明 30周年版』は、単なるブランド特集号ではありません。30年という時間の積み重ねを、「つぐ」という一つの言葉で貫いた、思想書に近い一冊です。

ものづくり、暮らし、旅、言葉、そして北欧デザイン――多層的な視点からミナ ペルホネンの現在地を描き出しており、ファンはもちろん、デザインや暮らしに関心のある読者にも深く刺さります。


16.まとめ|「つぐ」という思想を手元に残すために

本書が伝えているのは、ブランドの成功談ではなく、「続けること」の尊さです。人から人へ、物から人へ、時代から次の世代へと受け継がれるもの。その営みの積み重ねこそが、ミナ ペルホネンという存在を形づくってきました。

30周年という節目に刊行された本書は、記念誌であると同時に、これからの100年を見据えた“中継点”でもあります。長く手元に置き、何度も開きたくなる一冊です。

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