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戦隊大失格 20巻 感想・考察
人類の守護者と称される竜神戦隊ドラゴンキーパー――しかしその戦いは、すべて“やらせの茶番”だった。
春場ねぎの『戦隊大失格（20）』では、怪人Dと夢子が共闘し、真の自由を懸けて“正義の象徴”グリーンに挑む。
クローンの存在、人質となったイエロー、そして崩壊する戦隊組織。
「超スーパー日曜決戦」を舞台に、強者と弱者、支配と反逆の構図が激突する。
偽りの平和を打ち破る衝撃の展開と哲学的テーマが融合した第20巻――戦隊漫画の常識を覆す革命の一冊だ。
第1章 作品概要と第20巻の位置づけ
『戦隊大失格』とは？――戦隊×悪役の新感覚アンチヒーロー漫画
『戦隊大失格』は、春場ねぎによる“戦隊ヒーローもの”を逆転させた異色作。人類を守る正義のヒーロー・ドラゴンキーパーと、敗北を義務づけられた怪人軍団という皮肉な構図が描かれる。第20巻では、その「茶番劇」がついに終わりを迎え、真の戦いが始まる。従来の正義・悪の枠を超えた“反逆者の英雄譚”が加速する巻だ。
第20巻のストーリー概要と主要テーマ
舞台は「超スーパー日曜決戦」を目前に控えた戦隊本部。主人公Dは、怪人でありながら人間社会を変えるための戦いを続ける。本巻では夢子との共闘が描かれ、“支配からの解放”という本作の核心テーマが強く浮かび上がる。権力・操り・自由――それぞれの立場から「戦う理由」を問う重厚な一冊だ。
クライマックス目前！「超スーパー日曜決戦」の全貌
人類が崇拝する“正義の儀式”――日曜決戦。その裏では、ヒーロー側の腐敗と怪人たちの怒りがぶつかる。第20巻では、グリーン率いる大戦隊と反逆側の最終衝突が描かれ、シリーズ屈指のスケールと緊張感を誇る。バトルの迫力だけでなく、「勝者と敗者の定義」を根本から覆す展開が見どころだ。
第2章 第20巻あらすじ・展開解説
夢子とDの共闘――戦う理由と信念
Dは夢子に共闘を提案するが、彼女は心を閉ざしている。だが、クローンたちの存在を知り、夢子は「偽物として生きる」ことへの疑問を抱く。二人の対話は、戦闘以上に哲学的で、命や自己の意味を問う深い場面となっている。やがて二人の信念が一致し、“反逆の共闘”が始まる。
人質となったイエロー、緊迫の救出戦
戦隊側に囚われたイエローは、敵味方双方の戦略に利用される存在となる。Dと夢子は、イエロー救出を通じて“仲間”という曖昧な絆を取り戻していく。救出作戦は一瞬も気の抜けない展開で、心理戦と肉弾戦が交錯。仲間を救う行動が、そのまま“自由を奪還する戦い”に重なって描かれる。
ラスボス・グリーンとの頂上決戦
ついに姿を現すドラゴンキーパー・グリーン。その圧倒的な力と支配の象徴としての存在感はシリーズ最大級。グリーンとの戦いは、単なるバトルではなく“体制への挑戦”のメタファー。Dたちは力ではなく「意思」で抗うが、その代償は大きい。クライマックスにふさわしい緊迫感と哲学性を併せ持つ一戦だ。
強者と弱者の淘汰――“生き残る者”の条件
第20巻では、戦いが進むごとに強者だけが残り、弱者が脱落していく構図が明確になる。しかし春場ねぎが描く“強さ”とは、単なる戦闘力ではない。信念を貫く者、他者の痛みを知る者こそが“生き残る資格”を持つ。バトルの中で、価値観がひっくり返る瞬間が痛烈に描かれる。
クローンたちの存在が示す“支配と自由”の構図
クローンとは、組織が生み出した“都合の良い人間”の象徴だ。本巻で彼らが直面するのは、創造者への反逆か、隷従かという選択。これはヒーロー・怪人・人間すべてに共通する“支配からの解放”というテーマを象徴している。物語全体の倫理的深みを与える重要な要素だ。
第3章 キャラクター分析と心理描写
Dの覚悟と変化――「反逆者」から「革命者」へ
Dはこれまで、怪人として“生き延びる”ために戦ってきた。しかし第20巻では、明確に「世界を変える」意志を持つようになる。戦いの目的が個人的復讐から集団解放へと変わることで、Dは真の意味で“革命者”となる。表情・言葉・行動のすべてにその変化が現れる巻だ。
夢子の決断に込められた意味
夢子は“人間の姿をした怪人”という存在であり、アイデンティティに揺らぎ続けてきた。彼女がDと手を組むことは、自らを偽物として見下してきた社会への反逆でもある。20巻での夢子の決断は、彼女自身の「存在証明」であり、物語全体を貫く“自由意志”の象徴となる。
グリーンの本性と戦隊組織の闇
グリーンは、正義の象徴としての“戦隊”を体現する存在。しかしその実態は、権力と支配のシステムそのもの。彼の狂気的な正義感は、体制に従うことを当然とする現代社会のメタファーでもある。第20巻では、その“正義の歪み”がついに露わになる。
イエローの役割――犠牲か希望か？
イエローは捕らわれの立場ながら、物語の転換点を作る重要な存在だ。彼女の決断がDと夢子の行動に影響を与え、“仲間”という概念を再定義する。犠牲者としてではなく、自らの意志で動く者として描かれ、物語に希望をもたらすキャラクターである。
その他キャラの関係性と今後への布石
戦隊側・怪人側ともに、各キャラクターの関係性が複雑に絡み合う。中でも、Dを敵視しながらも理解し始めるキャラの存在が、次巻への伏線を生む。戦いを通じて“共存”の可能性がわずかに見え始めており、シリーズ全体の思想的深化を感じさせる展開となっている。
第4章 物語テーマ・構造分析
“やらせの戦い”という社会風刺構造
『戦隊大失格』の根底には、「正義の茶番」を続ける戦隊組織という痛烈な社会風刺がある。
怪人たちは“悪役”を演じることを強要され、民衆は偽りの平和に酔いしれる。
これは現代社会における構造的支配やメディアの演出を暗喩しており、単なるバトル漫画ではなく“欺瞞への反抗”を描いた寓話として機能している。
正義と悪の入れ替わり――価値の転倒構造
第20巻では、ヒーローが悪に、怪人が正義に見えるという“価値の転倒”が明確になる。
Dたちの戦いは、人間らしさを取り戻すための闘争であり、もはや従来の勧善懲悪の構造には収まらない。
春場ねぎは「ヒーローとは誰のための存在か？」という根源的な問いを突きつける。
戦隊モノの「形式美」と「虚構性」をどう崩すか
色分けされた隊員、定期的な決戦、勝利の儀式――従来の“戦隊の型”を徹底的に利用しながら、それを物語の中で破壊する。
この自己言及的な構造が『戦隊大失格』の真骨頂だ。
第20巻ではその形式の限界が描かれ、ヒーローの“記号”が崩壊する瞬間が見事に演出されている。
支配構造を描く“反体制エンタメ”としての完成度
本作は、娯楽作品でありながら社会批評としての厚みを持つ。
“支配する者”と“支配される者”の構図を鮮やかに描き、そこに人間の業や欲望を重ねていく。
第20巻では、Dの反逆が単なる抵抗ではなく、“構造そのものの否定”へと進化しており、物語の思想的完成度は極めて高い。
第5章 ファン考察・今後の展開予想
日曜決戦の決着後に待つ“再構築の物語”
20巻のクライマックスで、日曜決戦が新たな局面を迎える。
だがこれは物語の終わりではなく、“再構築”の始まりだ。
偽りの戦いが終焉を迎えたあと、真の世界秩序をどう立て直すのか。
Dたちが作る“戦隊のない未来”が、次巻以降の最大のテーマとなるだろう。
戦隊組織崩壊の兆しとDたちの未来
グリーンとの戦いを通じて、戦隊組織の内部に潜む腐敗が露わになる。
信頼を失ったヒーローたちは、もはや正義の象徴ではいられない。
Dと夢子の行動は、戦隊の解体を象徴する“革命の序章”。
次巻では、崩壊後の混沌の中で新たな秩序を模索する展開が予想される。
夢子とグリーン、どちらが“真の人間”なのか？
20巻の重要テーマは「人間性とは何か」。
感情を抑制された戦隊と、感情を取り戻そうとする怪人――この対比が鮮やかに描かれる。
夢子は“創られた人間”でありながら最も人間らしく、グリーンは“人間でありながら怪物的”。
この逆転構図が次巻への哲学的伏線となっている。
シリーズ完結へ――ラストバトルの布石を読む
第20巻は、最終章への扉を開く重要な巻。
クローン技術、支配構造、偽りの平和――これらの要素が一つに収束し、最終決戦の土台が整った。
春場ねぎがどのような結末を描くのか、読者の期待が最高潮に達している。
“正義の終焉”をどう描くのか、次巻はまさにシリーズの核心となるだろう。
第6章 読後レビュー・総括
『戦隊大失格（20）』は、戦隊という檻を壊す革命譚
第20巻は、戦隊ヒーローという“形式”を徹底的に壊す物語だ。
Dたち怪人は、ただの悪役ではなく「正義の檻に閉じ込められた存在」。
彼らの戦いは、戦隊という虚構を打ち破り、“自由とは何か”を問う。
春場ねぎの筆致が炸裂する、シリーズ屈指の思想的転換点といえる。
バトルと思想の融合――エンタメの極致
本巻の魅力は、激しいバトルと哲学的対話の両立にある。
アクションの迫力に加え、“戦う意味”をめぐる会話が深く刺さる。
娯楽性と思想性が高次元で融合しており、読後には強烈な余韻が残る。
春場ねぎの挑戦――“正義の定義”を描き直す作家性
『五等分の花嫁』で知られる春場ねぎが、次に挑んだのは「ヒーロー像の再定義」。
彼は恋愛漫画から社会批評的ヒーロー譚へと大胆に舵を切り、見事に成功させている。
20巻はその作家性の集大成ともいえる一冊だ。
総括：戦う理由を問う物語の到達点
『戦隊大失格（20）』は、“戦う意味”を根底から見つめ直す革新的作品。
正義も悪も存在しない世界で、何を信じ、何のために戦うのか。
Dと夢子の姿は、現代社会を生きる私たち自身の問いでもある。
そのメッセージ性とエネルギーが、本作を単なる戦隊漫画以上の存在に押し上げている。
