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こういうのがいい 11巻 ネタバレ解説
『こういうのがいい』第11巻は、恋人でもなく、セフレでもない“フリーダムフレンド(フリフレ)”として関係を続ける村田と友香の物語が、新たな局面を迎える巻です。友香が恋愛相談を受けた相手が、実は自分のフリフレである村田——そんな“知らぬままのすれ違い”が、二人の微妙なバランスを揺らしていきます。雨のシーンを象徴に、自由と孤独、欲と情の狭間で揺れる人間関係を繊細に描く11巻。現代の“恋愛しない関係”をリアルに映す大人の心理劇として、これまで以上に深い余韻を残す内容になっています。
1. こういうのがいい 11巻 概要・基本情報
『こういうのがいい』第11巻は、ヤングジャンプコミックスDIGITALから刊行された最新巻で、紙版とKindle版の両方で入手可能です。2025年の時点でシリーズは安定した人気を維持しており、「恋愛しない男女の関係」を描く作品として特異な立ち位置を築いています。
物語の中心にあるのは、村田と友香という二人。彼らは恋人でもなく、一夜限りの関係でもない「フリーダムフレンド(フリフレ)」として、互いの欲望と距離感を心地よく保ちつつ関係を続けています。
第11巻では、その関係性が他者との接点によって微妙に揺れ動く様子が描かれています。
特に注目すべきは、今下(いましも)という女性キャラクターの登場。彼女が友香に恋愛相談を持ちかけるところから物語は展開しますが、読者はその“相談相手”が実は村田であることを知っており、登場人物間での情報非対称が緊張感を生み出しています。
11巻の表紙は雨の印象的なシーンをモチーフにしており、全体的に“濡れた空気”と“曖昧な境界線”を象徴するデザインになっています。
この巻は、シリーズ全体の中でも心理的な密度が高く、恋愛と非恋愛の狭間を深く掘る章として位置づけられるでしょう。
2. 新展開/11巻で起きること(ネタバレ注意)
※この章には物語の核心に触れる要素が含まれます。
11巻の物語は、冒頭から“雨”と“相談”という二重のモチーフが支配します。
友香が今下の恋愛相談を受けている間、その相手が村田だとは知らずに、彼女自身もまた村田との関係を再確認する時間を過ごします。
この二重構造が巧妙で、読者は「誰がどこまで知っているか」を常に意識しながら読み進めることになります。
物語後半では、村田が今下との関係をどう扱うかという選択が提示され、これまで“軽やかさ”を信条としてきたフリフレ関係に、倫理的な揺らぎが生じます。
このあたりから、物語は単なる日常系ではなく、「自由であることの代償」や「責任なき関係の痛み」を問う方向へ進みます。
特に印象的なのは、雨の中での再会シーン。
言葉少なにすれ違う二人の姿に、これまで積み上げてきた“曖昧な信頼”が見え隠れします。
作中のセリフ「好きじゃないわけじゃない」が示すように、愛という言葉を拒みながらも、感情の濃度は決して薄くありません。
この巻は、いわば“フリフレ関係の臨界点”。
身体と心のバランスが崩れかけた時、どんな言葉や行動が人を繋ぎ止めるのか——。
11巻はその問いを静かに突きつけてきます。
3. フリーダムフレンド(フリフレ)という関係性の本質
“フリフレ”という言葉は、この作品の根幹にあります。
単なる性的関係(セフレ)でもなく、恋愛関係でもない。
そこには、「感情を共有しながらも、束縛しない」という一種の理想と危うさが同居しています。
村田と友香の関係は、互いの“都合の良さ”で成り立ちながらも、決して冷めてはいません。
会話には笑いがあり、気遣いがあり、何より相手を“理解しよう”とする努力が存在します。
つまり彼らは、“感情はあるけど恋愛ではない”という矛盾を生きているのです。
社会的に見ると、この関係は倫理的にも曖昧です。
恋愛関係のような責任も、性的関係のような一時性も持たない。
しかし、それゆえに「今この瞬間を生きる関係性」としてのリアリティがあります。
作中で描かれる“距離の保ち方”“沈黙の間”“視線の交わり”は、その微妙なバランスを象徴していると言えるでしょう。
この“フリフレ”という概念は、現代の恋愛観の揺らぎを映しています。
恋人関係に縛られず、けれど孤独でもない。
その間に漂う自由と孤立の狭間を、本作はリアルに、時に痛々しいほど鮮明に描いているのです。
4. 登場人物・心理分析
『こういうのがいい』の魅力は、キャラクター同士の関係だけでなく、個々の心理の繊細な描写にあります。第11巻では、三人の登場人物がそれぞれ異なる感情の揺らぎを見せます。
村田は、一見クールで理性的に見えますが、彼の根底にあるのは“安定した関係への渇望”です。フリフレという形を取っているのも、失うことへの恐怖と依存を隠すため。彼のセリフや態度の端々から、感情を制御しようとする“抑圧”が垣間見えます。
一方で、友香はより感覚的で、感情に忠実です。相手に期待をしすぎないように見えて、実はどこかで“自分を選んでほしい”という願いを抱えています。第11巻では、その想いが“恋愛相談”という形で皮肉にも露呈します。
そして、第三の登場人物である今下(いましも)。
彼女は恋愛に対して純粋で、むしろ一般的な恋人観を体現する存在です。だからこそ、村田と友香の“ゆるい関係”に風穴を開ける役割を担っています。
彼女の登場によって、これまで安定していた二人のバランスは微妙にずれ始め、読者は「自由な関係の脆さ」を痛感するのです。
第11巻の心理描写は、感情の爆発ではなく静かな歪みとして描かれています。
それがリアルで、読後に“誰も悪くないのに、少し切ない”余韻を残します。
5. 魅力・評価・批判点
『こういうのがいい』が他の恋愛作品と一線を画すのは、**「恋愛しない関係を肯定する」**というテーマ性にあります。
11巻においてもその路線は貫かれ、恋愛至上主義的な価値観に一石を投じる構成です。
魅力的なのは、まずリアルな会話の質感。
登場人物たちは漫画的なセリフを話さず、実際の人間関係に近い、微妙な“間”や“遠回しさ”を持っています。
このリアリティが読者を物語に引き込み、「自分の経験と重ねてしまう」と評される理由です。
また、性と心の距離感の描写も秀逸です。
行為そのものを直接的に描くのではなく、そこに至るまでの“気配”や“空気”で読ませる。
その繊細さが、本作を“エロティックでありながら上品”に保っています。
一方で、批判的な声も存在します。
「登場人物の関係が曖昧すぎて共感できない」「都合のいい関係を美化している」という意見もあり、読者によって評価が分かれる作品です。
しかし、まさにその“賛否両論”こそが、この作品が現代の価値観を鋭く突いている証拠だといえるでしょう。
第11巻では、そうした議論がさらに深まります。
特に“自由であることの孤独”や、“優しさが人を縛る瞬間”といった描写は、読者に静かな痛みを残すものです。
6. 今後予想・考察
11巻の展開から推測すると、物語は**“関係の再定義”**に向かっています。
これまで「自由」として機能していたフリフレ関係が、他者(今下)の登場によって“選択”を迫られる段階に入ったからです。
予想される方向は大きく三つあります。
1つ目は、恋愛への転化。
これまで避けてきた「好き」という言葉に、どちらかが踏み込む可能性。
2つ目は、関係の終焉。
誰も悪くないまま、関係が静かに終わる——それもこの作品らしいリアリズムです。
そして3つ目は、新しい関係性の提示。
恋人でも、友人でも、セフレでもない、新たな“つながり方”を模索する展開。
作者・双龍氏の作品傾向から見ても、安易なハッピーエンドでは終わらない可能性が高いです。
むしろ、関係が“未完成のまま続く”という曖昧なラストを迎えることが、本作の哲学と整合します。
12巻以降では、村田・友香・今下の三人の視点が交錯し、それぞれの“正しさ”がぶつかる構造が予想されます。
その時、作品は恋愛漫画ではなく、**「人間関係論」**として一段階上のステージに達するかもしれません。
7. まとめ・おすすめ読者層
『こういうのがいい』第11巻は、シリーズの中でも特に“静かな緊張感”が漂う巻です。
登場人物たちは大きな事件を起こさない代わりに、内面で確実に変化していきます。
その過程を丁寧に描くことで、読者に「人を好きになることの曖昧さ」を考えさせる構成になっています。
おすすめの読者層は、次のような人たちです。
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定型的な恋愛漫画に飽きた人
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関係性の“グレーゾーン”をリアルに感じたい人
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会話や心理の“間”を楽しめるタイプの読者
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「愛」「自由」「孤独」といったテーマに興味がある人
逆に、明確な恋愛の進展やカタルシスを求める読者には少し淡白に感じるかもしれません。
しかし、その“物足りなさ”こそが、この作品の余韻であり、現代社会における「関係のリアル」を象徴しています。
第11巻は、“こういうのがいい”というタイトルの意味を、もう一度読者に問いかけてきます。
恋愛とは何か、自由とは何か——。
この問いに自分なりの答えを探すための一冊といえるでしょう。